2020年12月 最近触れたコンテンツ雑感

最近触れたコンテンツについて書きます。

ネタバレありで書いてるから触れる予定の人とかは作品名見てヤバ!!ってなったらバックしてもらえればありがたや。

 

 

最近読んだ本


細雪(上・中・下)/谷崎潤一郎
 2月に買って読んでたんだけど沼倉愛美さんファイナルライブのときに豊洲駅のトイレに忘れた悲しい思い出。(買い直しました)

 第二次世界大戦直前の時代を舞台にした、大阪にある旧家、蒔岡家の4姉妹(長女:鶴子、次女:幸子、三女:幸子、四女:妙子)の話。まぁ4姉妹の話といいつつ長女はほとんど出番ないけど。
 ちょくちょく視点は変わるけど幸子が視点になる話が多いけど、幸子が気苦労抱えること多くてお姉ちゃんしてるな~って感じ。話としては当時の日常を描いてる。軸とするならなかなか結婚が決まらない雪子がお見合いを繰り返す話と、妙子の自由恋愛&職業婦人を目指したがる辺りがメインって感じなんかな。

 さすが旧家ってこともあってこの時代なのにどこに行くのもタキシー(タクシーの表記違い)やし、東京もバンバンいくしお芝居とか映画もガンガン見に行く。当時の上流階級の暮らしとはかくなるものか……。
 最も、長女は子だくさんかつ途中で東京に住むこともあって、生活が苦しくなったりする。台風で住んでる安普請の家が吹き飛びそうになるとこはどうなるかとひやひやしちゃったね。最後の方でお芝居行くのに誘われず泣いたりするシーンもあってちょっとかわいそう。
 次女の幸子は本当に面倒見いいな~って感じる。作中でも娘や夫よりも雪子や妙子のことを考えてる時間が長いかもしれんって振り返るシーンもあるし。
 雪子は頑固やけど、子供やったり病人の面倒身がめちゃくちゃいい。あと4姉妹で一番美人らしい。雪子について書かれる下巻最後の部分が少し特徴的やから取り上げられがちやけど、細雪の言いたいところはそこじゃなくね~?ってなった。
 妙子は上巻からずっと職業婦人を目指すって言ってたからそれで幸せになるんよな~って思いながら読んでたらそうはならず……
 中巻での板倉との身分差がある恋が良かったのにあんな顛末は……。
 そのせいかわからんけど幼なじみである啓坊に貢がせる「ヴァンパイア」(←作中でこう呼ばれる)になった妙子には「お前~~~~~!!!!」ってなっちゃったな。
 それでも幸子も雪子も幼なじみである啓坊との結婚を勧めてたけど、啓坊は完全な地雷やって思ったからそうならなくて安心した。
 最後のシーンの物寂しさは悲しかったな。ただ、これから戦争を迎えるってとこで物語が終わってるから、たくましく生きていけるの強さを一番持ってるのは妙子だと思うんだよな。強く生きて欲しい(お前が強く生きろ)

なんか上手く良さが伝えられないな。大きな事件もあるけど、それほどドラマティックに描かれるわけじゃない。けど、読み始めると止まらない面白さがあった。あと一つ一つの文章が結構長めだけど、スラスラ読めるのが凄い。
版が違うのか下巻だけ文字が小さくて読むのにちょっと難儀したけども、読んで良かったな~。
あとタイトルの細雪、綺麗でいいよね。細雪のようにさらっと溶けてなくなる日常を描いてるからこの題名なのかとか、細君になる雪子の話ってことでこの題名なのかと考えてたけど『細雪瑣談』というエッセイに書かれてるらしい。
『主人公・雪子の名前から『細雪』という題名が頭に浮かんできた。雪子の雪も表現しているし、「読んだときの音からいっても、たいへん美しいと思ったから、ついそう決めてしまった』
え、主人公って雪子やったんか~~~~い。あと英題が「The Makioka Sisters」なのは草。

関係ないけど、国語の教科書とかでもあった、少し前の時代の小説に絶対ある注釈読むの大好き。

 

薬指の標本/小川洋子
表題作と六角形の小部屋の二編収録。

小川洋子の文章はめちゃくちゃ読みやすいし、綺麗。静謐って言葉がしっくり感じる。それと同時に、どこかこの世ではない感じを漂わせてるんだけどそこがたまらん。
短編集の「海」に収録されてる「バタフライ和文タイプ事務所」って作品が小川洋子の全てが詰まってるから読んでくれ~~~~。合う合わないめちゃくちゃ別れるやろうけど。

薬指の標本はこうなるやろうな~~って思いながら読み進めたら案の定。
ここまで執着できるものがあるってどんな感じなんだろうな。
ともすれば、とてもおどろおどろしい感情を綺麗な文章でコーティングしたって感じ。
フランスで映画化もされてるらしい。

六角形の小部屋についても書きたいけどまた今度にしよう。(力尽きた)


ブラフマンの埋葬/小川洋子
どんな動物とも言えない、水かきを持つ不思議な生物ブラフマンと、その飼い主の話。
どの登場人物にも名前がついていない中、唯一名前を持つブラフマン
最後に主人公が目を離した結果、ブラフマンは亡くなってしまうけど、主人公の動じなさは少し恐ろしかった。諦念の結果か、あるいはこうなることをどこかでわかって行動したからなのか。
なんとも言えない寂寥感漂う結末やけど、作中のブラフマンが泉を泳ぐシーンはきらきらと瑞々しくて、そこが印象に残った。

 

・紙の動物園/ケン・リュウ
中国系アメリカ人の作者が書いたSF短編集。去年話題になった三体の中→英の翻訳者としても有名。
その短編の中でも印象に残ったのが以下の六篇
・紙の動物園
もののあはれ
・結縄
・選抜宇宙種族の本づくり習性
・文字占い師
・良い狩りを


・紙の動物園
主人公「ぼく」が自分が中国系であることに劣等感を覚えて、その源である母に冷たくあたったけど、母の死語、母がどういった気持ちだったっていうかを知るっていうのが大まかな流れ。
母が折り紙に力を込めて動かすことができるってのはギミックに過ぎなくて、生前の思いが明かされるときにやりきれない気持ちになってしまった。
「ぼく」を批判することは簡単だけど、自分でもこういう行動取っちゃうだろうなって思うし。母の愛も、孤独もその深さに、いたたまれなくなる。

 

もののあはれ
日本人の大翔が主人公。他国の人から見た日本人像があまりにストイックすぎてびっくりする。
もののあはれって言葉に感銘を受けた作者が書いたらしけど、この主人公みたいに自己犠牲精神は強くないですよ~って思いながら読んだ。
ただ鹿児島でスペースボートに乗りこむまでの描写は実際にもありそうなことが多々あって面白かった。

 

・結縄
先住民が己の知識を縄を結んだ縄文字で表現するのを、タンパク質の形状に似ていることに着目して、利用しようとする医薬品メーカー社員のアメリカ人ト・ムと先住民の縄文字を引き継いできたナン族のソエ=ボの話。結縄文字の知識を渡すことに躊躇うソエ=ボに、過酷な状況でも育つ種籾を与えるからと取引するけども……。
知的財産権のことを深く知らず、利用されるソエ=ボに感情移入しがちだけれども、ト・ムのやってることで救われる人も大勢いるわけで。「正しい」って何だろうね。

 

・選抜宇宙種族の本づくり習性
架空の宇宙に住む種族たちがどうやって知識を継承していくかってのがつらつら書かれてる作品。自分たちに当てはめると知識の継承って言うとやっぱ文章が多いけど、音で残すひともいれば、絵で残す、あるいは上記の結縄にみたいに独自の文化で残す人もいるわけで、なんらかの形で自分も後生に伝えるもの残したいよな~。

 

・文字占い師
冷戦下の台湾の村が舞台。いじめられてたリリーは老人と出会って「忘年之交」と言えるくらいの友人になるけど……。
これは日本人の自分だと簡単に理解したって言ってはいけない作品だなって感じた。
「結縄」でもそうだけど、ケン=リュウは割り切れない話の描写が凄すぎる……。
台湾と中国について、もっと知識だけでもきちんと身につけないといかんな。

 

・良い狩りを

元々妖怪退治の家系だった主人公と、妖狐である艶の話。

霊的な力が衰え行く時代に機械技師として生きる主人公が、人間になったまま戻れなくなって、ありし日の妖狐の姿に戻ろうとするために知識を総動員して機械の狐へと生まれ変わらせるところが、ファンタジースチームパンクが混ざり合った感じでたまらんかった。

Netflixで配信されてるラブ&デスロボットって短編アニメ集の一エピソードにもなってるのでそちらででも触れてくれ~~~

https://www.netflix.com/watch/80223956

 

とりあえず6つだけ挙げたけど収録されてる15篇全てが良かった。
1ビットのエラーはテッド・チャンの「地獄とは神の不在なり」に影響を受けて書いた思い入れのある作品らしいからテッド・チャン読んでみよう~ということで「あなたの人生の物語」を買ったのでまた読んで感想書こう。

 

ケン・リュウの頭の中どうなってるのってくらい凄い作品だった。

三体も他の作品も読むぞ~~~~

 

 

・春の庭/柴崎友香
なんかタイトルが頭に残っててブックオフで買ったんだけど2014年の芥川賞受賞作品らしい。それで頭に残ってたんだな。これ以外の作品を読んでないけど、この作者の文章は綺麗で流れるような文章だなって思った。小川洋子から滲み出るホラー感を抜いた感じ?

ぶっちゃけ、二回読み直したけど良くわかってない。けど不愉快ではないというか、むしろ好き。
正直、ラストの女優が出てくるところとかいまだによく理解できてない。(俺の理解力不足な面は否めない)
その女優が西に似てると感じたのは、庭に関する人物で主人公が一番強く印象に残ったからかな。かつて写真集「春の庭」に写っていた馬村かいこ、その写真集を見て、その舞台になっていた家に強い執着を持っていた西、その家に住んでいた森尾美和子etc それらが重なり合って生まれた像が立ち上がってきたのが女優かな~って考えたけど、「女優の名前を太郎はすぐ思い出した」ってあるんだよな~~~。
色んな感想とか見ても良くわからんかったからみんな読んで俺に解説してくれ~~~。

とりあえず柴崎友香は他の作品も読んでみる。


最近見た映画

・魔女見習いを探して
おジャ魔女どれみが下敷きにある作品としてはめちゃくちゃ良かった。
正直、普通の新規の劇場アニメとして見てたら叩いてたかもしれんなって感じる場面も多々あった。
ミレさんの会社の描写が適当すぎる部分とか、ソラが発達障害の子の受け入れる塾を訪れてそういった職を目指す→最後のMAHO堂でもうそういった仕事始めてる部分とか。
でもおジャ魔女どれみを見てることで、この作品の伝えたいことってそこじゃないよな~っていうのが理解できたから細かいところは気にならず問題なく見られたというか。

後半にあった「どれみちゃんが卒業式に出ないってなったときに友達やクラスメイトが集まったときに、これって魔法だなって。魔法って誰もが持ってるんだなって思った」
ってソラが語ってたとこが全てかなって思う。
イカがお父さんを見つけたシーンで拒絶されて「魔法なんてない!」って言ったシーンもここに繋がるし。個人的に一番ここが響いたな~ 
超常現象って意味での魔法はなくても、より人生を良い方向へ向かえる魔法は誰しもが持ってるなら、俺はどんな魔法を持ってるんだろうな。前向きになれるいい映画だった。

あ、台詞部分はこんな感じのことを言ってだけで細かいところは違うので許してちょんまげ。

 

最近聞いてる曲
ネオンテトラの麻疹たち/鬼束ちひろ
https://open.spotify.com/track/5fINvdvYoaAbiOiZ1f53Za?si=pWB351ySSXK7gvDlVxpSGQ

11月に出た新譜「HYSTERIA」収録曲。昔のデモテープが出てきて、それに歌詞を乗せたアルバムらしい。なんにせよ新しい曲が聴けるのは本当にありがたい。
恋って伝染病みたいってところからこんな歌詞書けるのすごいよな~。鬼束ちひろの歌詞は考えるな、感じろ系が多いと思うんだけど今回もそう。
ネオンテトラが本当に麻疹になるのかはわからんけど、綺麗なタイトルで好き。
サビのたたみかけるようなメロディも良い。
前作の「シンドローム」が良すぎたからどうなるかと思ったけど、好きになれる曲があって良かった。

 

・水槽の中のテトラ/石川智晶
https://open.spotify.com/track/2B0v36nordx88sagqygsbR?si=AzwUNkhqTO6VqlOuNs2tkw

テトラ繋がりで石川智晶の1stアルバム収録曲。
元々このアルバムは今まで聞いてきたアルバムの中でも五本の指に入るくらいに聞きまくってた奴。
ただ、この曲に関しては当時はあんまり響かなかったというかあんまり聞いてなかった。
けど、今の年齢になってから沁みるようになったというか聞きまくってる。(spotifyで年間一番聞いた曲になってた)
歌詞は全部好きなんだけどサビの「今気づいた 最初は一番弱かった青いテトラ 思いもかけず一番長く生き続けてる そんなことで気持ちが動くのはきっとどこかで僕が望んでたことなんだと思うよ」が一番好きかな。
淡々としたトラックも水の中にいるみたいで心地良い。


・独白/坂本真綾
https://open.spotify.com/track/73S6qXMFVhXb4MchX0KmwU?si=30DMJk5BT4yV9NYAc2nNtg

最初の静かなメロディからあんなに激しくなるとは!
早くライブで聞きたいよ~~~~~!!!
ラスサビの迫力たまらん!

 

・ゼロユニバース/山本彩
https://open.spotify.com/track/4QLGjDKrFvMog4lJwLTBl4?si=wsnOSW2GT8Oank1WXJAUwg

山本彩の歌声いいな~って思ったのがNMB時代のジャングルジムっていうしっとりしたソロ曲だった。
ソロデビューしてからは本人がロック好きだからそういう曲が多かったけど正直合ってないな~~って感じることが多かったんだよな。
今回のこの曲はすとんと落ちてくるというか、しっくり来る感じ。
歌い上げたり、叫んだりするよりも、語るように歌うのがこの人には合ってるんじゃないかって改めて思った。

 


あかん、最近触れた奴全部の感想は書けん。追いつかん!ということでとりあえずこんだけ!

 

やっぱ感想書くのは難しすぎるけどこれからもちょこちょこ書いていこうと思いました(小並感)

 

おわり